目次
- スペック比較
- 光学性能(解像度,ボケ,色収差など)
- AF性能(速度と精度,トラッキング性能など)
- 操作性とビルドクオリティ
- 投資対効果: 新品価格と売却価格から考える
- その他(価格,サイズと重量,ブランド信頼性)
徹底比較:Tamron 35-150mm f/2-2.8, Sigma 28-105mm f/2.8, Samyang 35-150mm f/2-2.8
結婚式やイベント撮影など、多様なシーンで活躍する高性能ズームレンズ。今回は、特に注目を集める Tamron 35-150mm f/2-2.8 Di III VXD, Sigma 28-105mm f/2.8 DG DN Art, そして Samyang 35-150mm f/2-2.8 の3本を徹底的に比較し、それぞれの特徴、強み、弱みを詳細に分析します。単なるスペック比較や性能評価に留まらず、実際の使用感やユーザーの声、そして投資対効果まで考慮し、レンズ選びを考えます。
1. スペック比較
まず、3本のレンズの基本的なスペックを比較してみましょう。
項目 | Tamron 35-150mm f/2-2.8 Di III VXD | Sigma 28-105mm f/2.8 DG DN Art | Samyang 35-150mm f/2-2.8 |
---|---|---|---|
焦点距離 | 35-150mm | 28-105mm | 35-150mm |
開放F値 | f/2-2.8 | f/2.8 | f/2-2.8 |
最短撮影距離 | 0.33m | 0.4m (全域) | 0.33m |
最大撮影倍率 | 不明 | 0.32倍 | 不明 |
フィルター径 | 82mm | 不明 | 82mm |
重量 | 1165g | 990g | 1231g |
防塵防滴 | あり | 不明 | あり |
ファームウェアアップデート | USB-C | 不明 | レンズドックが必要 |
その他 | レンズユーティリティ対応 | カスタムボタン | カスタムボタン, フォーカスホールド機能 |
この表から、各レンズの焦点距離、開放F値、重量など、基本的なスペックの違いが明確になります。
- Tamron 35-150mm は、35mmから150mmという幅広い焦点距離をカバーし、開放F値も明るいのが特徴です。
- Sigma 28-105mm は、28mmスタートでより広い画角をカバーしつつ、比較的小型軽量な点が魅力です。
- Samyang 35-150mm は、Tamronと同等の焦点距離と開放F値を持ちつつ、価格面で優位性がある可能性があります。
2. 光学性能
次に、各レンズの光学性能について詳細に見ていきましょう。
- 解像度:
- Tamronは、A7RIV(61Mpix)で非常に良好なシャープネス、A1(50Mpix)で優れたシャープネスを発揮し、中心から隅まで一貫した画質を提供すると評価されています。ただし、個体差によっては隅の描写が甘くなる場合もあるようです。
- Samyangは、隅の解像力でTamronに及ばないという指摘がありますが、中心部の解像度や全体的な画質は良好であるとの意見もあります。ただし、個体差が大きいという報告もあるため、注意が必要です。
- Sigmaは、中央部の解像度が非常に高く、隅の解像度も良好で、全体的に優れた性能を発揮すると評価されています。
- ボケ:
- Tamronは、70mm以上の焦点距離で滑らかな背景ボケが得られ、中心部のボケ玉も綺麗であるとされています。
- Samyangは、ボケ玉がわずかに楕円形になる傾向がありますが、全体的なボケ味は良好です。
- Sigmaは、背景のボケは非常に柔らかく美しいと評価されており、玉ボケ内に**同心円状の模様(玉ねぎボケ)**がわずかに見られる場合があります。
- 色収差:
- Tamronは、色収差が非常に少ないと評価されています。
- Samyangは、Tamronと同様に色収差が少ないとされています。
- Sigmaは、色収差は中程度であると評価されています。
- その他:
- Tamronは、逆光時のフレアやゴーストが目立つという指摘がありますが、全体的なコントラストは非常に良好です。また、Lightroomでの現像時に画像の輪郭が揺れる現象が報告されていましたが、現在は改善されているようです。
- Sigma は、歪曲収差が強いという指摘がありますが、ソフトウェアでの補正が推奨されています。
- Samyangは、色味がTamronよりもニュートラルで、若干寒色であるとされています。また、逆光耐性ではTamronよりも優れているという評価もあります。
これらの情報から、各レンズはそれぞれ異なる光学特性を持っていることがわかります。特に、解像度においてはSigmaが優位、ボケ味においてはTamronが優位、色収差においては3社とも良好という傾向が見られます。
3. オートフォーカス性能
オートフォーカス(AF)性能は、レンズ選びにおいて非常に重要な要素です。
- AF速度と精度:
- Tamronは、高速かつ正確なAFを実現しており、動画撮影でもスムーズなフォーカスが可能です。ただし、Tamron 70-180mm F2.8 Di III VXD と比較すると、わずかに遅いという指摘があります。
- Samyangは、AF速度がTamronよりわずかに速いという意見がありますが、AF作動音が少し大きいという指摘もあります。また、100mmから150mmの間で若干の前ピンや後ピンが見られる場合があり、動画撮影時のズームイン・アウト時に、Samyangの方がTamronよりもフォーカスを失いやすいという報告もあります。
- Sigmaは、高速かつ正確で静かなAFを搭載していると評価されており、連写モードでもズーム中でも非常に良好に動作するとされています。ただし、近距離での撮影時にフォーカスが外れる場合があるようです。
- トラッキング性能:
- TamronとSamyangは、どちらも優れたトラッキング性能を備えており、動体撮影でも安定したフォーカスを維持できます。
- Sigmaに関しては、特筆すべき情報はありません。
- その他:
- Samyangには、マニュアルフォーカス時に、フォーカスポイントを記憶できる機能が搭載されています。
- Tamronは、レンズユーティリティアプリを介して、フォーカスリングの挙動やカスタムボタンを細かく設定できます。
AF性能については、各レンズとも高いレベルにあると言えますが、動画撮影時の挙動や細かな機能に違いが見られます。特にSamyangは、AFの信頼性において若干の不安要素があると言えるでしょう。
4. 操作性とビルドクオリティ
操作性やビルドクオリティも、レンズ選びにおける重要な要素です。
- 操作性:
- Tamronは、ズームリングの滑らかな操作感やカスタマイズ可能なボタンなど、操作性に優れています。レンズユーティリティアプリを使用することで、さらに詳細な設定が可能です。ただし、ズームリングが硬いという指摘もあります。また、ズームリングが自重で伸びてしまうという問題点も指摘されています。
- Samyangは、フォーカスリングの抵抗が少ないという特徴がありますが、ズームリングがやや硬く、動画撮影時にぎくしゃくした動きになるという指摘があります。また、レンズの繰り出し(レンズクリープ)が発生しやすいという指摘があります。
- Sigmaは、金属製の質感の高い外観を持ち、操作性も良好です。絞りリングを備えており、クリック感の有無を切り替えることができます。ズームリングは滑らかに動きますが、特定の焦点距離でロックできないという点が、TamronとSamyang同様、不便に感じるユーザーもいるかもしれません。
- ビルドクオリティ:
- TamronとSamyangは、どちらも防塵防滴構造を採用しており、厳しい環境下でも安心して使用できます。
- Sigmaは、金属製の筐体を採用し、高い堅牢性を実現しています。
操作性やビルドクオリティについては、各レンズとも高いレベルにありますが、レンズクリープやズームリングの操作感、カスタマイズ性に違いが見られます。
5. 投資対効果
レンズの購入は、単なる消費ではなく、将来的な価値を考慮した投資と捉えることもできます。ここでは、各レンズの投資対効果について、中古市場での価格変動を参考に分析します。
メーカー | 新品価格 | 買取価格 | 損失額 | 損失率 | 回収率 |
---|---|---|---|---|---|
SIGMA | ¥222,750 | ¥150,000 | ¥72,750 | 32.7% | 67.3% |
TAMRON | ¥179,820 | ¥123,000 | ¥56,820 | 31.6% | 68.4% |
SAMYANG | ¥135,000 | ¥70,000 | ¥65,000 | 48.1% | 51.9% |
この表から、以下の点が読み取れます。
- 損失率:Tamronが最も低く(31.6%)、次いでSigma(32.7%)、Samyang(48.1%)となります。つまり、中古市場での価格下落が最も少ないのはTamronです。
- 実際の損失額:Tamronが最も低く(¥56,820)、次いでSamyang(¥65,000)、Sigma(¥72,750)となります。
- 回収率:Tamronが最も高く(68.4%)、次いでSigma(67.3%)、Samyang(51.9%)となります。
これらのデータから、Tamronは、最も効率的な投資対象であると言えます。Samyangは、新品価格は安いものの、中古市場での価値下落が大きいため、投資対効果は低いと言えるでしょう。Sigmaは、Tamronには及ばないものの、回収率は比較的良好です。
6. その他
その他の重要なポイントについても触れておきましょう。
- 価格:
- Tamronは、比較的高価な部類に入ります。
- Sigmaは、Tamronよりもやや安価な価格設定です。
- Samyangは、Tamronよりも大幅に安価に購入できる可能性があります。
- サイズと重量:
- Sigmaは、比較的小型軽量である点が魅力です。
- TamronとSamyangは、サイズと重量がほぼ同等です。Tamronの方がわずかに軽量であるという意見もあります。
- ブランドの信頼性:
- Tamronは、長年の実績と信頼性のあるブランドです。
- Sigmaは、高い光学性能と革新的な製品を開発するメーカーとして知られています。
- Samyangは、近年急速に成長しているメーカーですが、修理体制や品質管理に不安が残るという声もあります。特に、マウントのガタつきやズームリングの不具合が報告されています。ただし、正規代理店であるケンコーによる初期不良対応は比較的迅速に行われているようです。
これらの要素も、レンズ選びの際に考慮すべきポイントです。
7. 結論:あなたに最適なレンズは?
ここまで、Tamron 35-150mm f/2-2.8, Sigma 28-105mm f/2.8, Samyang 35-150mm f/2-2.8 の3本のレンズを詳細に比較してきました。それぞれのレンズに魅力と弱点があり、最終的にどのレンズを選ぶかは、あなたの撮影スタイル、ニーズ、そして予算によって異なります。
- Tamron 35-150mm f/2-2.8 Di III VXD は、高画質、高速AF、幅広い焦点距離、優れた操作性、そして高い投資対効果を求めるプロフェッショナルやハイアマチュアにおすすめです。特に、結婚式やイベント撮影など、多様なシーンで1本のレンズで対応したい場合に最適です。ただし、中古で購入する際は個体差による品質のバラツキや、ズームリングの不具合には注意が必要です。
- Sigma 28-105mm f/2.8 DG DN Art は、より広い画角と携帯性、そして優れた光学性能を重視するユーザーにおすすめです。旅行やストリートスナップなど、機動性を重視するシーンで活躍するでしょう。ただし、歪曲収差や価格には注意が必要です。
- Samyang 35-150mm f/2-2.8 は、コストパフォーマンスを重視するユーザーにおすすめです。Tamronと同等の焦点距離と明るさを持ちながら、より安価に購入できる可能性があります。ただし、品質管理や修理体制に不安が残るため、初期不良や故障のリスクを考慮する必要があります。