2001Yのプロフォール画像

2001Y@Y20010920T

シネスコトリミングとアナモルフィック撮影の違い

映画らしい横長フォーマット「2.39:1」を得る代表的な方法は大きく二つあります。

  • シネスコトリミング(Cinemascope Crop)
    3:2 や 16:9 で撮影した映像の上下を切って 2.39:1 に整形するポストプロダクション手法。センサーの高さ方向の画素を削る代わりに、機材は一般的な球面レンズで済みます。
  • アナモルフィックレンズ
    レンズ内部で横方向だけを「圧縮(squeeze)」して撮像面に収め、後処理で横に「引き伸ばす(desqueeze)」ことで 2.39:1 を得る方式。上下を捨てずセンサー全面を使えるうえ、oval-bokeh や水平フレアなど独特のルックを生みます。

比較の前提

センサー公称最高画素数実サイズ (W×H)
フルサイズ約 6100 万 (9 504 × 6 336)36 mm × 24 mm
APS-C約 4020 万 (7 728 × 5 152)23.5 mm × 15.7 mm

フルサイズはシネスコトリム、APS-C は 1.60× アナモルフィック(3:2 → 2.39:1 になる代表的倍率)を使用。

主要スペックを 1 枚にまとめると

指標フルサイズ + シネスコトリムAPS-C + 1.60× アナモルフィック
使用できるセンサー面積約 542 mm²(36 mm × (36 ÷ 2.39))約 369 mm²(23.5 mm × 15.7 mm)
使用できるセンサー縦幅15.06 mm(36 ÷ 2.39)15.7 mm(APS-C 全高)
使用できる画素数約 3780 万画素(6100 万 × 15.06 ÷ 24)約 4020 万画素(APS-C 全画素)
同一 F 値レンズのボケ量APS-C とほぼ同等(縦寸が近い)フルサイズ・トリムとほぼ同等(縦寸が近い)

※アナモルフィックはデスクイーズ後の**実効幅 37.6 mm(23.5 mm × 1.60)**でわずかに広角になります。

数値から読み解くメリット・デメリット

  1. 解像度とノイズ耐性

    • シネスコトリム
      3780 万画素あれば 4K 以上の納品では十分。実効面積 542 mm² と APS-C を上回るため、高 ISO でわずかに有利です。
    • アナモルフィック
      縦 5152 px をフル活用できるため、被写体の垂直方向ディテールが豊富。面積は APS-C そのものなのでノイズ耐性は APS-C 相当ですが、最新センサーなら実用上は問題ありません。
  2. 被写界深度とボケ
    両方式とも縦寸法が 15 mm 前後でほぼ一致。同一 F 値・同一縦画角ならボケ量は大差なしですが、アナモルフィックは oval-bokeh やストリークフレアが発生しやすく質感が大きく変わります。

  3. 画角

    • シネスコトリム:幅 36 mm をそのまま使う広さ。
    • アナモルフィック:実効幅 37.6 mm と +1.6 mm 広い。ワイド志向なら強み。
  4. 撮影フローとコスト

    • トリムは球面レンズで完結し、編集で上下をカットするだけ。導入コストが低く、モニターや EVF も通常表示で OK。
    • アナモルフィックはレンズそのものが高価・大型。撮影時はスクイーズ表示対応モニターか LUT が必要。ただし撮って出しの段階で映画らしい描写が得られる。

まとめ ― どちらを選ぶ?

こんな人におすすめ理由
フルサイズ+トリム既存レンズ資産を活かしつつ 2.39:1 が欲しい。編集ワークフローを軽くしたい。ノイズ耐性を少しでも稼ぎたい。
APS-C+アナモフレアや oval-bokeh を含め“映画っぽい”絵づくりが最優先。横方向をより広く使いたい。アナモの運用に慣れている。

両者は縦解像感と被写界深度がほぼ同等という点で画作りのベースラインは近いです。決め手は「ワークフローの簡便さ」か「描写の個性」か。あなたの機材環境と作品テイストに合わせて選択したい。